腫瘍を中心に放射線科領域の最近のトピックスについて一部を紹介する。
核医学臨床にてもFDG-PETが話題の中心で、検査結果の解釈では特に生理的集積・擬陽性・偽陰性に注意する必要がある。判定量指標として用いられるSUV<2.5では良性の可能性が、SUV>4.0では悪性の可能性が高いとするのが一般的で、感度・特異度共に90%程度であり良好であるが、特異度は低いものの視覚判定の感度が勝り、肺結節でSUV<2.5にても視覚判定で非描出では見られなかったが僅かにでも集積が認められる場合には60%は悪性であったとの報告も見られる。最近はPET/CT scannerが導入されることが多く、異常集積と正常集積の識別が容易である、腫瘍か否かの判断が向上する、病期診断がより正確になる、検査時間が短縮するなど大きなメリットを有するが特有のアーチファクト、被曝量が多くなる、病変へのFDG集積を頼りにするあまりCTで明らかな異常所見を見落とすなどのデメリットも存在することに留意する必要がある。
Multi-Slice CTの登場はMRI検査件数が減少する施設が見られる位インパクトがあり、画像診断の中心を占めCT angioを始め大変有用性が高いが撮像スライス数が数百スライスと大変多く観察法によってはコントラストが高い構造(造影効果が高い)や関心領域はみているが他は充分観察していないことも起こり見落としが少なからず存在することを念頭に置くべきである。又、3D画像は判りやすい表示法ではあるが、読影対象ではないと考えた方がよい。2004年Lancet誌に掲載された日本人の3.2%は診断X線による(大部分はCTによる被曝)と報道され大きな反響があったことは記憶に新しい。
ここ数年はMRIはMulti-Slice CTに押され気味であったが、拡張強調画像が高原らが開発したDWIBS法により体幹部に応用可能になり腫瘍診断として大きく脚光を浴びている。全身を撮像し表示も白黒反転してPET-like imageとし、有用性をFDG-PETと対比して検討する報告が出始めている。PET又はPET/CT scanner よりもMRIは二桁以上普及しており被曝もなく、現在市販の多くの1.5T MRI には標準仕様で搭載されており急速に普及すると思われるが解釈には慎重を要する。
近年、放射線治療装置やコンピュータの長足の進歩により物理的に線量を病巣に集中させる技術が発達し、三次元原体照射、体幹部定位照射、強度変調放射線治療などの高精度放射線治療が可能になった。最も早期に有用性が示されたのは固定が容易で高い照射精度が得られる脳の定位照射であり、γナイフは全国に40ヵ所程度設置されている。ライナックによる定位照射は脳から体幹部に応用が進み早期肺癌・肝臓癌では手術に匹敵する局所制御が得られている。
強度変調放射線治療の対象は前立腺癌などが多いが高度な精度管理を必要とし、現時点では20ヵ所程度しか行われておらず、日本では画像誘導放射線治療が強度変調放射線治療よりも普及すると考える放射線治療医も少なくない。更に、粒子線治療計画も進められており、東北大学・山形大学でも炭素イオン線治療の導入を検討中である。
東北厚生年金病院 放射線科 主任部長 小山 周樹