ウィルス性肝炎

 慢性肝炎から肝硬変、肝細胞癌に進展させる肝炎ウイルスの主なものはB型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)である。

HBV持続感染者の多くは年齢とともにウイルス量が低下し、肝炎も沈静化する傾向を持つ。ウイルス量が低下せず肝炎が持続する慢性B型肝炎に対して、肝炎を生じない程度までウイルス産生を抑えることにより肝炎を沈静化させる薬が開発された。いずれもHBV自身が作る逆転写(RNA→DNA)酵素を阻害する。しかし、最初に登場したラミブジン(ゼフィックス)に対する耐性株の出現率は年10~15%と高率である。ラミブジン耐性株に対してはアデホヴィル(ヘプセラ)を併用する。H17.9にエンテカビル(バラクルード)が発売された。本剤の耐性株出現率は低いが、ラミブジンに耐性がでるとエンテカビルにも耐性が出やすいことより、35歳以上の慢性B型肝炎患者にはエンテカビルを最初から投与する方針になってきている。

B型肝炎に発生する肝細胞癌はC型肝炎の肝細胞癌と異なり、肝硬変でない背景肝にも発生し、肝炎が沈静化していても発生する特徴を有する。これらの抗ウイルス薬使用により肝細胞癌の発生率を抑制できる可能性が示されているが、HBV持続感染を終止できない現時点では慢性肝炎で肝機能正常者も含めて、すべてのHBs抗原陽性患者に対して発ガンを見据えた定期的な外来受診が必要である。

C型肝炎は肝機能異常が軽微でもゆっくりと肝硬変に向かって進展し、肝病変の進展とともに発ガン率が高まる。B型肝炎と異なりHCV駆除は可能で、過去のインターフェロン治療によりgenotype 2あるいは低ウイルス量の慢性C型肝炎患者の多くはHCVが駆除され完全治癒した。その結果、現在はgenotype 1bで高ウイルス量の患者が治療対象の大部分を占める形で残った。これらの患者に対してペグインターフェロンとリバビリンの併用療法が行われ、ようやく50%以上の治癒率を示すようになった。しかし、治療中の注意すべき重大な副作用も報告されており、慎重な外来での経過観察は必須である。

宮城社会保険病院 病院長 石井 元康

 

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